昨年ジャカルタで行われたアジア大会で200mのアジアチャンピオンとなった小池祐貴選手。
今シーズンは100mも好調で5月のゴールデングランプリでは自己ベストの10.04を記録し、日本選手権では10.19で3位に入りました。
そして2019年7月20日、ロンドンで行われたダイヤモンドリーグ第10戦の100m決勝で、9.98(+0,5)を記録しました。日本人3人目の9秒台スプリンターが誕生しました。
そんな小池選手、武井壮さんがパーソナリティを務めるラジオ番組「ATHLETE HIGH」で自身の走りについて語っていたので書き起こしました。
スプリンターであれば誰もが間違いなく参考になる内容です!
じっくり読んでみてください。
スタートの意識
武井:100mなにしてんの?
小池:なにしてるか…。
武井:まずスタートで一番意識してるのは何ですか?
小池:一番意識してるのは、音が鳴った時に一番最初に反応するのが頭から近いところが良いので、その日にもよるんですけど首下か腰から反応するっていうのはかなり意識してやってます。
武井:首下か腰!?
小池:はい。一番最初に動かすっていう感じで…。
武井:ちょっとこう、クッて引き上るような感じなのかな?ヨーイってなって、腰上がって、腰が伸びていくのか、もしくは前に出すのか。
小池:落ちる感じですね。腰が上がってパンッて鳴ったらスッて下に…。
武井:高く上がったところから、下に沈み込むような、潜り込むような、そういう感じ!?
小池:そうですね。音が鳴ったら手を離すっていうのはもう慣れというか…条件反射的なものなので。意識するとなると、そこのところがこうブレブレで出ないように安定させて出すために、音が鳴ったらこの方向に腰を進めていくんだぞっていう。スムーズに。スッと落としていくんだぞっていう。
武井:首下も同じようなイメージ?
小池:首下もそうですね。ほとんど同じような。
武井:少し腰と首下が平行くらいのところからスッとこう…まあ数センチですかね?
小池:そうですね。ほんとイメージだけなんですけど。
武井:一瞬潜るような感じで、スッと入って、その間に後ろ足を前に出しているってことなんですか?
小池:そうですね。もう足はほとんど考えてないです。
武井:考えてない。もう自然。なるほどね。あ、そうなんだ。
加速区間の走り
武井:走るっていう動作に関してはどうなんですか?10〜15歩目くらいまでかな。30m、40mまでくらいのところってどうしてんの?
小池:僕は全部トータルして、腰が前にスッと移動するのを邪魔しないで走りきるっていうのを大事にしているので。
武井:なるほど。じゃあ前足を下ろすじゃない?というか地面に着くじゃない?そこから腰がそこに向かってヒョンって入っていくような感じのイメージがあるってこと?
小池:あ、逆ですね。腰が前に進んで、その進んだ腰の真下に足を着くっていう。
武井:ああ、そういうフィーリングだ!そっち派!?
小池:そっちがメインです。腰がメインですね。
武井:じゃあ、とにかく最初のこのスッとこう腰を先行させて、下ろしていって、そこの腰がある場所に足をスッと入れて。
小池:そうですね。
武井:で、さらにそこからまた腰を前に行ったところに次の足が出てくみたいなイメージなんだ。
小池:はい。
武井:それを何歩くらいまでまず行くの?そのフィーリング…ずっとあるんだろうけど、でもちょっと変わるじゃん、途中で立ってきたら。
小池:そうですね。顔が完全に上がってからも腰の高さを安定させて、前からロープかなんかでグッとずっと引っ張られているような感覚で走っているので。もうとにかくブレーキをかけない、余計な力を入れないってだけを意識して。
武井:意識して走っている。なるほどね。
腕振りのイメージ
武井:小池祐貴的腕振りはどんなイメージなの?
小池:僕の表現をするんだったら、地面からくる反発を拾いにいくっていう感覚でいっているので。腕を後ろに引くっていうよりは前だけ意識してやっていて。足にドンって乗ったものを後ろに逃さないように、しっかり腕で前方方向にベクトルを持っていく感じ。
武井:やっぱ後ろにある手だよね。キモはね。
小池:そうですね。
武井:バンって振って、後ろの方にある手で前の方に…その、後ろの方にある手は同じ方のの足へのサポートじゃないですか。右手が後ろにあったら右足のほぼ着く時に、前に進めるようにコンってこうちょっと前に向けて出していく感じじゃないですか。
小池:そうですね。
武井:なるほどなあ。
小池:丁寧に拾っていくって感じですね。
武井:コンッ、コンッ、コン、コン、コンっていう感じですね。
小池:結構大事にしているのが、前に腕を上げるときも、後ろに引くときも、どっちも思いっきりやっちゃダメなので…、やっぱり前に出すとき、この一瞬のワンポイントだけクッと力入れるっていう。力入れる所と抜く所、気にしない所はしっかり作るようにして毎回…。
武井:もう抜くところはノーイメージですよね。なんにもしない感じですよね。
小池:もう動画見て「ああこうなってるんだ」っていうくらいですね。
武井:そういう感じですよね。下から出てくる腕で拾う感じですよね。膝あたりの重みみたいな、コンってくるやつをプインってこう拾う感じ。
小池:そうですね。なんかすごくこう抽象的な笑。
武井:抽象的ですけど、分かる人には分かる笑。日本で80人くらいには分かるフィーリングだと思いますよ。あとのリスナーの方は大変申し訳ございません。だからこれはね、速く走りたい人全員が役立つフィーリングの言葉ですから。首位打者にバットの振り方聞いてるみたいなもんですから。
最大走速度区間の走り
武井:トップスピード乗るじゃない。そういう作業してて、20歩くらいカンカンカンカンカンって行ったらトップスピード迎えるじゃないですか。その辺りからってどういうイメージなんですか?
小池:そのあたりからはもう全身全霊を懸けてブレーキをかけないだけです。ほんとにそれだけです。だからフォームを維持しようとかっていうのもないです。
武井:まったくない。とにかくスピードを落とさない?
小池:落とさない。余計なことをしないっていうのが一番…。
武井:たとえばその余計なことで、自分で一番嫌やつを3つ挙げろって言ったらなんですか?
小池:えっと、足を高く上げる、腕を思いっきり振る、だと思います。
武井:その2つ?
小池:その2つは絶対にやっちゃいけない。最後保たないです。
武井:なるほどね。腕はもうトップスピードなったら、もうほんのちょっと肘クイッぐらいの?もうそんなイメージもないの?
小池:もう整えるだけです。整えるだけです。
武井:その場にいてくれればいいくらいの?
小池:もうこのレーンをそのまま真っすぐ走るってだけ意識して、これ以上力を発揮しようとしちゃダメだっていう感じです。
武井:それ以上できないんだもんね。
小池:できないです。もうトップスピード出ちゃってるので。
武井:そうですよね。それをとにかく邪魔しないっていう所にフォーカスして。
小池:邪魔しない。はい。
武井:そう。
小池:待ってる感じですね。皆がこう…力を使い果たして、最後落ちてくるのを黙って待ってる感じ。
武井:待ってるよね!ほんと待ってるよね!後半さぁ、ひそかに上がってくるもんね。
小池:そうですね笑。ラスト10くらいでクッと上がってくる感じ。
武井:皆がイィーってなったときにさ、ヒョイヒョイヒョイって来るよね。4歩くらいでね。
小池:そうですね。
武井:あれは俺感じてた。なんかね、そういう感じなのね。
小池:そういう感じですね。
武井:なるほどね。邪魔しない。膝を上げない。足を上げない。
小池:足でコントロールしてる時点で走りってダメだと思ってるので。
武井:まじで!ちょっとコントロールしてるわー俺。つらいわー笑。もうこれはね、走るための必要な筋肉が十分付いているからこそですよね。きっとね。それが足りないとさ、そこにいない時があるじゃん足が。
小池:はい。
武井:それをなんとかするために動かさなきゃいけない時あったりするじゃん。ちょっと練習不足だったりすると。
小池:うん。もう転ばないように気をつけるくらいの感覚で笑。
武井:感覚があったわけ笑。それが今できなくなってきて、弱ってて。だからすごい、やっぱりね、しっかり走ろうと思った。そういう感じなのね、100m。
小池:そうですね。シンプルですね、僕は。
共通点を発見し、オリジナルを作り出す
武井:シンプルだけどいっぱい考えてるね。山ほど行き着いてるね!
小池:いやいやそんなことないですよ笑。
武井:いやいやいやなかなかそこ気付けてる人って陸上やってる人の中で少ないですよね、正直。
小池:そうですね。でも僕もできてる人たちを何回も何回も見て、できてる人たちの共通点ってなんなんだろうってずっと考えてなので。自分のオリジナルっていうよりほんとに勉強してやっと発見したっていう。
武井:分かります。俺も伊東浩司と朝原宣治の走りををマジで6万回見た。それに救われた。あと高橋和弘。身長160cmくらいしかないのに、10秒2くらいで走って。俺そいつのビデオめちゃくちゃ見てさ。今の人たちはいいよな。小池いる。山縣いる。桐生いる。サニブラウンいる。全部揃ってるんだもん!
小池:それも間違いないと思います。Youtubeでトップ選手の走りが良い画質で見れるっていうのは間違いなく僕らの力になっているので。
武井:最高よね!スローにもできるしね。
小池:時代の技術に助けられているのは間違いないです。
武井:くうぅう!20年後に生まれてれば一緒にリレー走れたかもしれないのに笑。チキショー笑。
小池選手も使用するナイキのスパイクレビューはこちら!